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しずくだうみ「都市の周縁」

販売価格 2,300円(税込2,484円)
型番 HYCA-3058

レーベル:なりすコンパクト・ディスク
品番:HYCA-3058
JAN:4571167364589
フォーマット:CD(フルアルバム)
発売日:2016年11月16日

曲目


1.いじわるなきみのこと
2.ぐるぐる
3.さみしさのABC
4.部屋
5.ゲーム
6.パラレルワールド
7.水色
8.選ばれない
9.さようなら
10.夜の海の夢
11.おしまい

詳細


リリカルでセンシティブな独自の世界観がじわじわと注目を集める女性シンガーソングライター“しずくだうみ”これまでに3枚のEPを自主制作で発表してきた彼女が、待望の1stアルバムをなりすレコードからリリース!

初のフル・アルバムとなる「都市の周縁」は、それまでの彼女の楽曲を制作してきた吉田仁郎(野獣のリリアン、ハルメンズX等)と、新たに藤木和人(旧東京パフォーマンスドール等)をアレンジャーに迎え、過去発表した3枚のEPからセレクトし新録音した楽曲と新曲で構成された1stアルバムにしてベスト・アルバム的な内容。
正統派のように見えて異端、マイノリティのようでオーソドックスな相反した要素を常に抱えた唯一無二な、しずくだうみの世界は10年代の女性SSWの新たな指針となりうる傑作です!!

プロフィール


しずくだうみ
「闇ポップ」を掲げるシンガーソングライター。主に鍵盤弾き語りで、時々バンドやユニットなどの形態も取り入れ都内を中心に活動。これまでに自主盤で3枚のミニアルバムを発表。

★岡村詩野ライナーノーツ
 しずくだうみ、という恐らく本名ではないだろう、あまりにリリカルで、でもほんの少しのウィットも感じさせる名前を聞いたのは、そんなに前のことではない。たぶん、1年とか、1年半とかそのくらい前のことだったと思う。
その時点で彼女――そう、“しずくだうみ”というのは女性の名前なのだが――は既にいくつかのEPを発表しており、早速に彼女の音源をできる限り聴いてみたわけだが、実のところ最初は大いに戸惑ってしまった。

 声はとても個性的だ。可愛いとか素敵というありきたりな表現では伝えられない、ややファニーな風合いさえ感じさせる。だが、楽曲は明確な着地点を設けようとしないというか……例えば初期の「失恋ソング」や「夜の海の夢」といった楽曲には、キャロル・キングやランディ・ニューマンの“血筋”とも言える、ピアノ弾き語りの正攻法シンガー・ソングライター・スタイルを感じることができたが、「Katazuke(tidy a room)」はアンビエント〜エレクトロニカの系譜上にあるようなインストゥルメンタルだし、初音ミクをフィーチュアした曲もある、という具合。
「水色(仮)」もメロディアスな歌ものではあるがポスト・ロック以降の空気を確実に孕んでいて……どうやらピアノやギターでシンプルに演奏するだけではなく、リミックスなどの編集作業、PC上での大胆なカットアップも好んでサラリとこなせる力量とセンスも持ち合わせているようだ。この人のアイデンティティの真ん中には何があるのだろう、と、次々と曲を聴くたびにに迷子になってしまった。

 しかしながら、かように、弾き語りだけではなく、バンドやユニットでも活動し、アイドル・ユニット“ニュートリノ温泉”のプロデューサーでもある彼女は、宇多田ヒカル、阿部芙蓉美、YUIといったポピュラーな女性アーティストの作品を聴いて影響を受けたと認める極めて素直な24歳の女性だ。
聞けば、小学生の頃から作詞をしたり、中学で曲を書いたりと早熟だったようだし、洋楽アーティストにも触れる機会は少なくなかったというが、一方でJポップという枠組みの中で語られるような大衆音楽への愛着をそのまま自分の作品の中に投影できる、柔軟で大らかな感覚の持ち主とお見受けする。おそらく、ポップスのど真ん中で勝負できるソングライティング力と自身の演出力を彼女は兼ね備えているだろう。
でも、そのスイッチをどこで入れるのか、ブレーキをかけるのかの境目を冷静にジャッジすることもできる、きっとそんな音楽家だ。筆者が彼女の過去の作品を聴いて、最初は戸惑ってしまったのも、そのスイッチの気ままなまでの入れ替えがあまりにも眩しかったからに他ならない。

 しずくだうみ、というアーティストは、ポップ・ミュージックの内側も内側、最深部にも本気で踏み込めるだろうし、その中で夢中になって人生を賭けることもできるだろう。けれど、他方、そのフリンジでシニカルに自分の才能を転がすこともできるはずだ。『都市の周縁』という、アイロニカルなタイトルを、この自身最初の大事なアルバムに与えてしまうような洒脱な……いや、捻くれた目線をも持っていることの意味。
そして、このアルバムで聴かせてくれる世界が、紛れもなく彼女自身の言葉と旋律のみで形成された純度の高い作品であることの意味。その両者のアンビバレントな繋がりを紐解くがごとく、このアルバムという名の玉手箱をわっと開けてみると、そこには6曲目のタイトルさながらのパラレルワールドが広がっていく。

 そこにはハッカのキャンディーもあれば甘いキャラメルもあれば、凶器にだってなりうる尖ったフォークやロープも入っている、何に使うのかわからない部品や工具もその中には転がっていた。これら我々現代人が暮らす生活の風景を黙って支えている小道具を、しずくだうみは丁寧に拾い集めては一つ一つ四次元ポケットに仕舞いこみ、ゆさゆさと静かに振ってみている。そうやって揺さぶった時に鳴っている音こそが……きっとこの『都市の周縁』なのだろう。

 さあ、都市が小さく軋む音を感じとってみよう。

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