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発売日:2021/5/19
レーベル:Basic Function
品番:BsF012
JAN:4582561394225
仕様:CD1枚組
オーストラリア在来の6種を収録した Australian Frogs 2。
トラック:
1. FOGG DAM
2. EUBENANGIE SWAMP
3. LAKE BROADWATER
オランダ人サウンドアーティスト・Felix Hess(フェリックス・ヘス)が 80 年代初頭から 2000
年代初頭にかけてカセットテープ、レコード、CD-R 等でリリースした世界中のカエルの鳴き声
を収録した「Frogs」シリーズから作家本人がセレクトしたベストの 3 編。長らく入手困難だっ
たタイトルを近藤さくらのアートワークで新装した限定プレス CD。
ブーメランの軌道の研究をする物理学者だった彼が後々に音の作品を作るきっかけともなった
シリーズで、作家の原点を知る上でも重要な作品
録音: Felix Hess
マスタリング: 大城真
イラスト: 近藤さくら
デザイン: 竹田大純
Felix Hess(フェリックス・ヘス)
1941 年、オランダ・デンハーグ生。1968-92 年にかけて、物理学、流体力学、魚の運動、金属中の転移など多くの研究に携わる。
ブーメラン研究で滞在したオーストラリアにて蛙の鳴き声に興味を持ち、以降、世界の蛙の鳴き声を録音しはじめる。
1982年、電子技術を用いたインタラクティブな作品制作を開始。以後、国内外で多くのインスタレーションを発表しテクノロジーアートの分野で高い評価を受ける。
日本との繋がりも深く、1989年に栃木県立美術館「音のある美術展」での初来日以来、1998 年まで日本でも多数発表。
紹介文
大城真さんから、フェリックス・ヘスさんの、カエルの合唱の音源集へのコメントを求められた。
参考に頂いたCDのうち、1枚はオーストラリアのカエルで、もう1枚は日本では外来種となっているオオヒキガエルの原産地での声だが、悪名高いこのカエルもプロの手にかかって、BGMにぴったりの連続音となっている。
残りの1枚は、京丹後市の水田のカエルである。実はこれこそ、30 年も前にヘスさんが私の研究室を訪問され、鳴き声の主を尋ねられたものだった。
カエルの雄は雌を呼ぶのに鳴き、その声は種によって違う。別種の雌雄が一緒になると、子孫が残らないからだ。このCDでは絶えず鳴くアマガエルを背景に、シュレーゲルアオガエルの澄んだ声と、トノサマガエルのくぐもった声が対照的である。
アマ、トノサマはご存知でも、シュレーゲルの名は知らない方が多いだろう。しかし、その名の主は、オランダ国籍のシーボルトに日本での採集品を委託され、調査した人物であり、オランダ人のヘスさんとの繋がりが連想されて面白い。
(京都大学名誉教授 松井正文)
フェリックス・ヘスに出会ったのは、1989年にベルリンで開催された“ressource kunst”という催しの時だった。
その後、彼の住むオランダ北部のHarenに訪ねたり、京都北部の丹後に迎えたりと、交友を重ねて来た。フェリックスからの手土産“BOLS”という陶器製のリキュール瓶を数えると、8本にもなる。
Groningen大学にあった彼の研究室には、カエルにまつわるポストカードなどの紙片があちこち壁にピンナップされていて面白かった。
物理学者でもある彼は、南オーストラリアでブーメランの飛翔軌跡を記録中に、平原に踏み込んだ時、それまで何か興味のある音に満ちていたのが、はたと止んでしまい、暫くその不思議に耳をそば立てていると、次第に先に聴いた音が再現してきたことに驚いたという。それがカエルたちの習性であったことを知ってから、大好きになった彼らの鳴き声の収集が始まったのだそうだ。
その発想で制作したセンサー内蔵の幾つもの箱を部屋に吊るす形のサウンド・インスタレーション“Sound Creatures”は、静かに聴き入ることを人に即す傑作だ。
後に、「丹後のカエル」編その他のカセット・テープが自費出版された。
カエルの合奏最盛期に長く我が家に滞在していた彼は、朝に夕に方々に録音に出かけて行っていた。特製のマイクロフォンを仕掛けて草地に寝転んでいた時に、鼻先に蛇がとぐろを巻いていたと、ぼくを驚かせたこともあった。
そして、急くようにして沢山のカセット・テープが貯まり、気づくとメモ書きとの照合が不可能になってしまった。友人を介して京都大学の松井正文教授を訪ねることが出来、そのことが可能になった。松井先生は、各テープの頭出しの一声で、何カエルなのかを突き止めて下さった。「あ、これは交尾中」とか・・・。
即座に大ファンとなったフェリックスは、松井先生編纂の大きく分厚なカエルの研究書を購入していた。松井先生の風貌が、カエルのようだった(失礼)ことが今も印象に残っている。
オランダの彼の家に泊まった時には、階段の踊り場に山積みされたオーストラリアの原住民の樹木の皮に描かれたドット模様の絵画があったのを思い出す。後に「禅画」収集が始まって、ついには「フェリックス・コレクション」をものにし、近年プレゼントされた大カタログには驚かされた。禅画に興味を抱いた頃に、うっかりフェリックス好みのそれを褒め称えたぼくにも責任があるけれど、並々ならぬ審美性の高い収集癖に頭が下がる。今や世界にとっても貴重なカタログになっている。
以前、香港におけるsound pocketの催しで彼と行動を共にした際、街中の印刻店で共に石選びをして作った花押「かえる庵」が、カタログに押印されていることに深い感慨を覚える。フェリックスの「丹後のカエル」が、リリースされて丹後に里帰りをする日を心待ちにしているところです。
鈴木昭男 17/09/2020
レーベル:Basic Function
品番:BsF012
JAN:4582561394225
仕様:CD1枚組
作品詳細
オーストラリア在来の6種を収録した Australian Frogs 2。
トラック:
1. FOGG DAM
2. EUBENANGIE SWAMP
3. LAKE BROADWATER
オランダ人サウンドアーティスト・Felix Hess(フェリックス・ヘス)が 80 年代初頭から 2000
年代初頭にかけてカセットテープ、レコード、CD-R 等でリリースした世界中のカエルの鳴き声
を収録した「Frogs」シリーズから作家本人がセレクトしたベストの 3 編。長らく入手困難だっ
たタイトルを近藤さくらのアートワークで新装した限定プレス CD。
ブーメランの軌道の研究をする物理学者だった彼が後々に音の作品を作るきっかけともなった
シリーズで、作家の原点を知る上でも重要な作品
録音: Felix Hess
マスタリング: 大城真
イラスト: 近藤さくら
デザイン: 竹田大純
Felix Hess(フェリックス・ヘス)
1941 年、オランダ・デンハーグ生。1968-92 年にかけて、物理学、流体力学、魚の運動、金属中の転移など多くの研究に携わる。
ブーメラン研究で滞在したオーストラリアにて蛙の鳴き声に興味を持ち、以降、世界の蛙の鳴き声を録音しはじめる。
1982年、電子技術を用いたインタラクティブな作品制作を開始。以後、国内外で多くのインスタレーションを発表しテクノロジーアートの分野で高い評価を受ける。
日本との繋がりも深く、1989年に栃木県立美術館「音のある美術展」での初来日以来、1998 年まで日本でも多数発表。
紹介文
大城真さんから、フェリックス・ヘスさんの、カエルの合唱の音源集へのコメントを求められた。
参考に頂いたCDのうち、1枚はオーストラリアのカエルで、もう1枚は日本では外来種となっているオオヒキガエルの原産地での声だが、悪名高いこのカエルもプロの手にかかって、BGMにぴったりの連続音となっている。
残りの1枚は、京丹後市の水田のカエルである。実はこれこそ、30 年も前にヘスさんが私の研究室を訪問され、鳴き声の主を尋ねられたものだった。
カエルの雄は雌を呼ぶのに鳴き、その声は種によって違う。別種の雌雄が一緒になると、子孫が残らないからだ。このCDでは絶えず鳴くアマガエルを背景に、シュレーゲルアオガエルの澄んだ声と、トノサマガエルのくぐもった声が対照的である。
アマ、トノサマはご存知でも、シュレーゲルの名は知らない方が多いだろう。しかし、その名の主は、オランダ国籍のシーボルトに日本での採集品を委託され、調査した人物であり、オランダ人のヘスさんとの繋がりが連想されて面白い。
(京都大学名誉教授 松井正文)
フェリックス・ヘスに出会ったのは、1989年にベルリンで開催された“ressource kunst”という催しの時だった。
その後、彼の住むオランダ北部のHarenに訪ねたり、京都北部の丹後に迎えたりと、交友を重ねて来た。フェリックスからの手土産“BOLS”という陶器製のリキュール瓶を数えると、8本にもなる。
Groningen大学にあった彼の研究室には、カエルにまつわるポストカードなどの紙片があちこち壁にピンナップされていて面白かった。
物理学者でもある彼は、南オーストラリアでブーメランの飛翔軌跡を記録中に、平原に踏み込んだ時、それまで何か興味のある音に満ちていたのが、はたと止んでしまい、暫くその不思議に耳をそば立てていると、次第に先に聴いた音が再現してきたことに驚いたという。それがカエルたちの習性であったことを知ってから、大好きになった彼らの鳴き声の収集が始まったのだそうだ。
その発想で制作したセンサー内蔵の幾つもの箱を部屋に吊るす形のサウンド・インスタレーション“Sound Creatures”は、静かに聴き入ることを人に即す傑作だ。
後に、「丹後のカエル」編その他のカセット・テープが自費出版された。
カエルの合奏最盛期に長く我が家に滞在していた彼は、朝に夕に方々に録音に出かけて行っていた。特製のマイクロフォンを仕掛けて草地に寝転んでいた時に、鼻先に蛇がとぐろを巻いていたと、ぼくを驚かせたこともあった。
そして、急くようにして沢山のカセット・テープが貯まり、気づくとメモ書きとの照合が不可能になってしまった。友人を介して京都大学の松井正文教授を訪ねることが出来、そのことが可能になった。松井先生は、各テープの頭出しの一声で、何カエルなのかを突き止めて下さった。「あ、これは交尾中」とか・・・。
即座に大ファンとなったフェリックスは、松井先生編纂の大きく分厚なカエルの研究書を購入していた。松井先生の風貌が、カエルのようだった(失礼)ことが今も印象に残っている。
オランダの彼の家に泊まった時には、階段の踊り場に山積みされたオーストラリアの原住民の樹木の皮に描かれたドット模様の絵画があったのを思い出す。後に「禅画」収集が始まって、ついには「フェリックス・コレクション」をものにし、近年プレゼントされた大カタログには驚かされた。禅画に興味を抱いた頃に、うっかりフェリックス好みのそれを褒め称えたぼくにも責任があるけれど、並々ならぬ審美性の高い収集癖に頭が下がる。今や世界にとっても貴重なカタログになっている。
以前、香港におけるsound pocketの催しで彼と行動を共にした際、街中の印刻店で共に石選びをして作った花押「かえる庵」が、カタログに押印されていることに深い感慨を覚える。フェリックスの「丹後のカエル」が、リリースされて丹後に里帰りをする日を心待ちにしているところです。
鈴木昭男 17/09/2020
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