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ヒカシュー「絶景」(Blu-ray) 

販売価格 5,000円(税込5,500円)
型番 mkr0018

レーベル:MAKIGAMI RECORDS
品番:mkr-0018
JAN:4571266200184
フォーマット:Blu-ray
発売日:2022/3/5

曲目


毎年恒例の年末のヒカシューのライブに、平沢進、あふりらんぽ、KERA、伏見蛍がゲスト参加した伝説の一夜の記録。

2016年12月25日に代官山UNITで行われたヒカシューの毎年恒例のクリスマスライブの模様を収録した映像作品。
現在43周年を迎えてなお前人未到の領域へ変化し続けるヒカシューのライブから貴重映像を収録。
ゲストに平沢進を迎え、多くのファンを驚かせた共演はまさに絶景! 感動・必携・永久保存版。
数量限定で発売された即廃盤となった映像集(DVD)を多くのご要望に応えて待望のBlu-ray化。

収録曲目
1. 筆を振れ、彼方くん
2. 入念
3. 天国を覗きたい
4. ニョキニョキ生えてきた
5. 庭師KING
6. グローバルシティの憂鬱
7. ミサイル
8. パイク
9. ナルホド
10. マスク
11. 美術館で会った人だろ
12. プヨプヨ

使用機材
Recording Equip :
Mic Pre : RME Micstasy x2 Mackie Onyx 800R x2
DSD Recorder : Korg MR2000S x17
Mixing Equip :
Solid State Logic SL6072G Console @ Sound Valley Studio A
Lexicon 480L

ヒカシュー
 巻上公一 (歌、テルミン、コルネット、尺八)
 三田超人 (ギター、歌)
 坂出雅海 (ベース)
 清水一登 (キーボード、バスクラリネット)
 佐藤正治 (ドラムス)

ゲスト
平沢進 (歌、ギター)
あふりらんぽ
 ONI (歌、ギター)
 PIKA(歌、ドラムス)
KERA (歌)
伏見蛍 (ギター)

企画 巻上オフィス
協力 (有)ケイオスユニオン

コメント


まさに絶景

ヴロツワフの「名も無き通行人」は
交差点を地中に入って行き出て行く彫刻作品で
その暫く先にポンチキで有名な店がある
なんともドンカマチック(リズムボックス風)な響きである
ポンチキとはポーランド風の揚げドーナツで中に餡が入っている
ヤブーコ(林檎)からトッフィー(バニラ)まで
たくさんの種類を詰めてもらいおみやげにした
そのボリュームはたっぷりでいて
初めての人間にも郷愁を提供する暖炉のような温かみがあり
記憶の片隅で独特のテーマ曲を奏でていた
それは「あの時」を思い出すにはもってこいの場所だった
まさに万感と呟いた あの
プラスチックスと共演した2013年のクリスマス
その翌年にH氏に共演を打診してから2年の歳月が経っていた
生命を鼓舞する独自の音楽は孤高の域にあり
ファルセットは幾重にも上昇し
天体をうごかす身のこなしはあくまでも軽やかな
かけがえのない旧友からの返事は
誰が運んでくれたのだろうか
さらに行くとクリスマスマーケットで賑わう中央市場広場
その脇道にグロトフスキー研究所があり
20世紀演劇の巨匠が晩年を過ごした街に来た感慨に浸った
「持たざる演劇」は超絶的肉体を礎にしている
一方クラクフのカントールの舞台では人間と人形が交換している
そのどちらも安易に絶景を見せることはない
明晰である必要はなく本日もまたいつもの曇り空なのだが
思考は無数の水たまりをつなぎ合わせていく
今日もし絶景と出会えるとしたら
あの焼き栗売りの美女が「鼻血がでてますよ」と
差し出してくれた白いハンカチの彼方
H氏の答えとともに
ビロードの幕が開いた瞬間にある

巻上公一 2016年クリスマス
カムチャツカはアヴァチン山のつるし雲を見つめながら

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若旦那は今日も屋根の上。

若旦那とはかれこれ20年以上会っていなかった。
彼が昔、大勢の人に「いいもの」をくれたのを覚えている。そう、あの若旦那だよ。
勿論私もその恩恵にあずかり、気分の良い日々を過ごしたもんだ。

あれから20有余年、「気分のよい日」の記憶を常にハラワタの
どこかで回転させながら、忙しい日々を私は過ごしていたんだよ。
あっちへ行っちゃあ何かを成し、こっちへ行っちゃあ考えをヒネリ。
裏路地の騒音と「考えがデングリガエル音」との区別もつかずに、せわしく
往来を行き来している時、何度か上の方から聞き覚えのある
声が「よお、平沢の」と呼ぶのを聞いたような気がするんだな。それでも
私は成すことを沢山包んだ風呂敷と、ヒネらねければならない考えの
入った瓶を抱えて往来を行き来していたんだよ。

それから2年。風呂敷はますます膨らみ、瓶も蓋が閉まらない程だ。
そしてまた聞こえたんだよ。「よお、平沢の」ってね。待てよ、あの艶のある
声、茶屋遊びの都都逸と能の謡いを宿してキテレツにカーブする声…。

ふと見上げれば案の定、若旦那だ。「よう、平沢の」と、若旦那はニコニコ
しながら言った。「2年前から呼んでたんだよ。何をそんなに忙しくしてるんだい?」
私は風呂敷と瓶を地面に置いて、懐かしい若旦那の顔をもっとよく見ようと
額に手をかざしたんだ。するとどうだい、若旦那は全然変わっちゃいない。
ふとハラワタの何処かで「そうか、屋根の上には”いいもの"があるんだったな」
という小声が回転した。

「こっちへ来ないかい?平沢の」

「そっちには何があるんだい?」

若旦那は額に手をかざし、遠くの方を仰ぎ見た。

「絶景だよ」

「絶景?!」

「そうさ、絶景さ。はやく登って来なよ」

私は地面に置いた風呂敷や瓶が気になったが、それよりも若旦那との再会と、絶景を選ぶことにした。再び額に手をかざし、若旦那を仰ぎ見てこう言った。

「勿論さ!今登って行くよ、巻上の!」

平沢進
(2016.12 ヒカシュークリスマスライブ『絶景』にて配布された「ヒカシューニュース」に寄せて)

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