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NEWDAY「It's a Newday」(cn0024)

販売価格 2,000円(税込2,200円)
型番 cn0024

レーベル:compare notes
品番:cn0024
JAN:4582237818529
フォーマット:CD
2010.1.06発売


迷いなきブロウでかます浜野謙太のトロンボーン 軽妙かつ巧妙で珍妙なる橋本キッズ剛秀のサックス
後見人を気取りつつシンバルを大きく揺らす中尾勘二のドラム
こんな自由な音楽をずっとずっと聴きたかったんだ。

 たぶん、こんな資料なんかに目を通すよりも、音楽は雄弁に語ってくれるものだ。それだけ、彼らの音楽は分かりやすく、とても人なつっこく、はっきりと人の心を震わせるものがある。
 ハマケンこと浜野謙太という男。多くの人が知るように、メンバーそれぞれ才覚溢れるSAKEROCK において、トロンボーンとMC とスキャット、そして無駄を担当しているいじられ上等の類い希なる才能。とぼけた音色でありながら力強く、歌心あふれる旋律を生み出すトロンボニストとしての顔は、SAKEROCKは元より「ASA-CHANG&ブルーハッツ」や「キリングフロア」でも知られるところ。また、氏の参加する「在日ファンク」や「ジェントル・フォレスト・ジャズバンド」で聴かせる歌声にもエンターティナーとしての才をはっきりと見て取れる。しかし、時に、トロンボーンを正面に凛と構え、マウスピースに空気を送り込む瞬間の特別な表情は、もしかして多くの人が気付いていない部分なのかもしれない。そう、NEWDAY の中で存在する浜野の表情は、こんなこと書くと誤解を生じるかもしれないけれど恐ろしくシリアスだ。自ら編み込んだ美しくも心躍る旋律を時に腫れ物を触るかのように丁寧に、時に暴発覚悟でぶちまけ続けるだけ。そこには、いつものエンターティナーとしての余裕はなく、ただただトロンボーン奏者としての覚悟だけが塊になっていたりする。とはいえ、そんな小難しいものではないからご安心をば。
 そして、橋本“キッズ”剛秀という男。その愛らしいルックスからは想像もつかない多彩な音色と表情で聴かせるサックス奏者。芝居を志していた彼がサックスを手にしたのは、恐ろしいことにわずか6年ほど前のこと。経緯は知らねど、なぜか中尾勘二の門を叩き、「サックスを教えてください!」と懇願。ブレスの方法から運指といった初心者心得から入ったものの、その3時間後にはあろうことか即興演奏をガツンと披露、中尾をして「もう教えることはありません」と相成ったある種の天才。現在は、自身が指揮を取る「ニコニコピンピンフィルハーモニックオーケストラ」や「西内隊」といったちんどん部隊、師匠の「中尾勘二隊」「原田依幸怪物オーケストラ」、伊藤啓太や弘中聡、本田祥康らとのセッション等々、縦横無尽の活動を展開。ただ、そんな中でも浜野との二管で構成されたNEWDAY では、アドリブを基盤としたアプローチではなく、二管の絡み合いや探り合いがどのような響きを生み出すかに専心しているように思われる。また、浜野の繰り出す強烈なブロウに手堅いツッコミを入れたかと思いきや、リリカルなメロディで楽曲全体を脱臼させる優れ技をも持っている。
 最後に中尾勘二という男、まったくもって得体知れず(笑)。かつては篠田昌已率いる「コンポステラ」や工藤冬里の「マヘル・シャラル・ハシュ・バズ」といった伝説に荷担したサックス/クラリネッテ/トロンボーン/バストロンボーン/あ、ドラムもしっかりやります……そのほかいろんな楽器を奏でるまったく大物に見えない畸人中の畸人。現在も盟友・関島岳郎らとの「ストラーダ」をはじめ、自身の「中尾勘二隊」「ヨカシキ」「中尾なんとか通り」、細馬弘通らとの「かえる目」や「NRQ」「ふいご」……そのほかジャンルを無視して数多くのバンド、セッションで20年以上の長きにわたり活動、音自体に対する圧倒的な解釈力と確かな技術によって、多くのミュージシャンより畏敬の念を抱かれている。なのに、完全ソロ作がいまだないというこの不思議。そして、NEWDAY は、浜野のオファーにより、管楽器を一切演奏することなくドラムに専心、ほかのセッションではほとんど聴くことのできない異様にパワフルで野太いドラム・ワークに驚かされるはず。とにかく存在から産み落とす音のひとつひとつに至るまでが謎、そしてそれはNEWDAY の音楽に存在する異物感の大きな部分を占めていると言えるだろう。
 今を去ること6年近く前、中尾と深い交友関係を持っていた稀代の辣腕トロンボーン奏者大原裕が亡くなった際、まだ大学生でほとんどその名を知られていなかった浜野のトロンボーンに対し、中尾は「大原裕亡き後は君だ」と迷いなく語ったという。それから数年の時を経て、演奏家として確かな成長を経た浜野、中尾に音楽の手ほどきを受けた橋本、そして中尾が出会い、ここにNEWDAY が生まれた。それは決して偶然なんかじゃない。
 また、浜野/橋本2人の手による楽曲は、非常に対照的。「ウコッケイ」や「It’s a Newday」等に代表されるファンキーかつ疾走感のある楽曲を書き下ろす浜野に対し、「結局忘れる」等の懐かしくもどこかひねくれた旋律をしたためる橋本。この2つの若き才能と確かなテクニックによる丁々発止は恐ろしく刺激的だ。また、それを影から支える中尾を加えたこのトライアングルは、いわゆるジャズ(もしくはジャズ的世界観)に存在するスノビズムとはまったく無縁の、市井の人のための音楽を生み出した。だからこそ、NEWDAY の自由きわまりない音楽は、陳腐な垣根を跳び越えて、すべての人の耳に届くと信じている、なぁんて。


1 ウコッケイ
2 疾風
3 人になりたい
4 日の出
5 地獄
6 永遠に好きなままかもしれない
7 結局忘れる
8 It's a Newday


Newday(ニューデイ)とは…
SAKEROCKのトロンボーン浜野謙太率いる三人のバンド。
強力子供サックス橋本キッズ剛秀に、伝説の曲者、中尾勘二。
トロンボーン、サックス、ドラムという編成で、すごくがんばる。
新しい時代の音楽なのか、ただがんばってるだけなのかは聴いてみないと分からない。

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