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antennasia「Warped Lucky」

販売価格 2,000円(税込2,200円)
型番 DLCA00

レーベル:Double Life Records
品番:DLCA0011
JAN:4582561399787
フォーマット:CD
発売日:2023/7/28

詳細


収録曲
1 Gone Angels (4:16)
2 Upon My Pillow (3:00)
3 Humming on the Moon (4:02)
4 金魚をすくい、あなたをすくい (5:23)
5 Doppelstrom (2:26)
6 Κάστρο της άμμου (3:36)
7 Winter Sleeper (5:07)
8 The March for the Horizon (5:44)
9 Feeling Like a River (5:20)

 エレクトロニック・デュオ、antennasia(アンテネイジア)の8枚目(EPを含むと11枚目)のアルバムとなる"Warped Lucky"は、自主レーベルDouble Life Recordsと、サンフランシスコの新進エレクトロニック・レーベル、Tabula Rasa Recordsとの共同でリリースされる。(Tabula Rasa Recordsは、NerveがNRV名義で制作しているソロのドローン・アンビエント作品を最初にリリースしたレーベルである。)
 1999年からの歴史を持つこのデュオの音楽を表現するのは難しい。トリップホップ?エレクトロニカ?シンセポップ?ダブ?恐らくは、そのどれも間違いではないが、この気まぐれな2人は、そういったサウンド
を取り入れつつも、常に、当時に別の方向を見ているかのような作品を制作してきたし、1枚のアルバムの中にも、様々なスタイルの作品を同居させてきた。
 「いびつなラッキー」というタイトルが付けられたこのアルバムは、モータウン的なベースラインにワンドロップが絡み、微細なノイズを含んだシンセパッドが浮遊する”Gone Angels”でスタートする。「私」は空中を自由落下しながら、リー・スクラッチ、ペリー、ジョン・レノン、カーティス・メイフィールド、クラウス・ノミ、デイヴィッド・ボウイ、ホルガー・シューカイといった自らのミュージック・ヒーロー達に「本当に奇妙な時代ですよ」とぼやく。アルバムを通して、sanのヴォーカルは、様々な表情を聞かせるリード楽器であると同時に、antennasiaの音楽を構成する主要な楽器として、コーラス、シンセパッド、ストリングス、サンプリング・ソースなど、多様な役割を果たしている。
オープニング・トラックは、よれたビートに、民族楽器の断片、懐古的なストリングス、鶏の鳴き声が重なる”Upon My Pillow”に引き継がれる。枕の上で踊る小さな男が、三日月のような笑みを浮かべながら「朝になるとあなたはいなくなる。雄鶏が鳴くとき、あなたは一人になる」と歌う、シュールレアリスティックなブルーズのような歌詞を、sanは、声を変化させながら歌い、楽曲に深い陰影を与えている。
ヴォーカルのsanは、今回、3つのトラックも制作している。異なる曲調の3曲だが、いずれも、場面次々に展開していき、まるで小さな交響曲か、ミニ・プログレのようだ。
”Humming on the Moon”では、月面でのライヴ・ステージの様子が歌われており、ダビーなサウンド処理が無重力状態を想像させる。”Κάστρο της άμμου”は、古いピアノ曲とエレクトロニカが融合したような楽曲で、トラッドやクラシカルの要素も伴いつつ展開する。sanは、ときに語り、囁き、繊細なエモーションを感じさせるヴォーカルを披露している。
劇場風の構成を持つダークなシンセポップ”The March for the Horizon”では、「渦巻く炎の嵐」のなかで乗員も帆も失った船の独白が、ドラマチックに歌われる。アルバム中、最もオリジナルなのは既存のジャンルで捉えることのできないこの3曲だろう。アヴァンギャルドでありながらポップで、部分的にはダンス・ミュージックでもある。
"Warped Lucky"は、もともと「ダークなアルバム」として制作が開始された経緯を持つが、その初期のコ
ンセプトの雰囲気は、トリップホップ、ブリストル・サウンドとダーク・アンビエントが融合したような”Winter Sleeper”、炸裂する花火のようなインダストリアルなサウンドのコーラスを持つ”金魚をすくい、あなたをすくい”の2曲に垣間見ることができる。いずれも、近年のantennasiaには見られなかった作風である。
アルバムには、antennasiaには珍しいインストゥルメンタル・ナンバー "Doppelstrom"も含まれている。
アンビエントと同時に、どこかカリブの雰囲気も感じられるこのトラックでは、sanが即興で演奏する空高
く吹く風のようなメロディカが印象的だ。
最終曲、"Feeling Like a River"には、NRVの活動を通して習得したアンビエントの手法が活かされているが、antennasiaとして制作されたこのトラックは、シンプルではあるが、より起伏に富み、情感豊かなヴォーカルによって彩色されている。
”Gone Angels”の最後で、「私」は、上方向からの重力と、愛に満ちた控えめなハーモニーを感じ、自分は浮遊する1枚の羽根なのだと気がつく。これと同じように、このデュオは、これからも、風に吹かれ、巡り合わせに吹かれ、またはいびつなラッキーに吹かれながら、どこにもとらわれない作品を作っていくのだろ
う。

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