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Hello Honu / 暮れる

販売価格 2,500円(税込2,750円)
型番 HHN002

レーベル: asana records
品番:HHN-002
JAN:4582561405914
フォーマット:CD
発売日:2025/7/16

作品詳細



曲目
1. 夕暮れ
2. 逡巡
3. 喪失と消失
4. swell
5. ロケット
6. 望遠
7. 春暮れ

京都を中心に活動するHello Honuのセカンドアルバム。
2022年の1stアルバムから3年。エンジニアに甲田徹氏を迎え、京都大学地塩寮にてノンモニター、一発撮りでレコーディングされた意欲作。

Hello Honu
2019年、有本秀右(ex.エンペラーめだか)が神田慧、ほしこたえを誘い結成。 メンバーの加入、脱退を経て、現在は有本秀右(gt,vo)、ほしこたえ(tp,vo,カシオトーン)、佐々木諒(flh,tp)、今上雅登(dr) の4人で活動中。ベースレス、金管楽器2本という編成で、水の落ちる音や、空調の音までも聞こえる空間で、最大のダイ ナミクスを作り出す。

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 まずはこんな駄文など何も読まずに音を聴いてみてほしい。音の、歌の、気配が感じられないだろうか。これこそがHello Honuだ。前作(ファースト・アルバム)の『遊泳』について、私は“余白のある音楽”と紹介した。余白がある音楽ということは、そこに聴く人の想像力、もしくは妄想を受け入れる余地がたっぷりあるということだ。それがほんのりとした余韻となって耳に残像を残す。気配のある音楽とはこういうものを指すのだろう。
 今作では、ドラマーが変わったことを受け、バンドのグルーヴに少々の変化が生じている。アシッド・フォークやカンタベリー・ロックのような深い揺らぎが感じられることはもとより、トランペット、フリューゲルホルンの柔らかな音色がメランコリックな翳りを落としているのも大きな特徴だ。それは、我々に例えばフェリーニの映画『道』のテーマ曲である「La Strada」や、東欧のジプシー音楽を指向するザック・コンドンによるプロジェクトのベイルートとの共振を感じさせる。このHello Honuのセカンド・アルバム『暮れる』は、そうした音楽が伝えてきた放浪、流浪、漂泊、あるいはもちろんそのタイトルからも想像できるだろう、黄昏、薄暮、逢魔時といったキーワードを内包していると言っていい。
 今作を彼らは京都大学の……正式には京都大学YMCAが設置・運営する地塩寮で録音した。モダンで趣のある建物として知られているが、もちろんそこはスタジオではない。レコーディング機材を持ち込み、古く天井の高い室内の空気を生かした一発録りをしたという。防音などもない。だから、窓の外をバスが通った時の走行音もそのままパッキングされた。
 そう、Hello Honuは京都を拠点に活動しているバンドだ。拠点にしている、というより、京都の音楽の現場をずっと見てきたメンバーによるバンドと言う方がきっと正しい。とりわけヴォーカリストでソングライターの有本秀右は、普段、西院にあるライブハウス『陰陽(ネガポジ)』の店長をしていて、毎日多くのバンドやアーティスト──もちろんその中には大学生の若手もいれば、長く演奏し続けているベテラン、中堅もいるわけだが──を見てきているリアルなシーンの証人だ。店に入るとすぐ右手に受付があるが、そのさらにすぐ横に大きなPAの卓があり、有本はだいたいこのどちらかにいる。そう、もう10年以上、ここにいるのだ。本日休演、台風クラブ、メシアと人人といった京都出身の精鋭たちはもちろん、折坂悠太、カネコアヤノ、ラッキーオールドサン、kiss the gambler、あるいはムーンライダーズの鈴木博文といった人気アクトたちも有本の目の前で演奏してきた。このHello Honuはそんな有本がリーダーだ。
 紆余曲折を経て、現在はその有本と、トランペットのほしこたえ、フリューゲルホルンの佐々木諒、ドラムの今上雅登の4人がメンバー。ほしこは有本以上に長いキャリアの持ち主で、jaajaでも活動、さらに去年は「キンカン部」としてアルバムも出した。「キンカン部」はムーズムズの小西ゆうじろう、松野泉、数えきれないのむうとんもメンバーだ。佐々木も吉田省念、キツネの嫁入りなど京都のアーティストとの交流が深い。今上は白黒ミドリのメンバーでもあり、さらにはハンドメイドの本作のアートワークを前作に引き続き手掛けているのが、最近はソロでも活動中の高山燦基で……とまあ、関わっている全員が京都や関西周辺の音楽の現場の、本当に重要なところを支えているわけだが、さておき、そんなことを一つも知らなくても全く問題ない、とだけ言っておこう。このHello Honuのセカンド・アルバムは深い余韻と残像を残してくれること、センチメンタルな流浪と黄昏の音楽であるということだけで、十分なのである。

岡村詩野(音楽ライター)



数年ぶりにシュウさんのアルバムコメントを頼まれた。
その時は俺は適当なコメント書いてしまったけど、ノグチ(本日休演)もコメントしていて、良いことを言っていた。
「みんなで歌っている時でさえもどこか一人でいるみたいだ」
それから数年後、音源を聴かせてもらってシュウさんは一人でいることを変わらず真摯に歌い続けているなと思った。
スカスカなアンサンブルが誰もいない教室で鳴っている。トランペットが秋の空の中、裸足で歌うシンガー。
人は誰でもずっとどこかで孤独なのだろうと思う。孤独だからこそ誰かとそれを密かに共有して、何か孤独以上の感覚を持っていけるのかもしれない。
ノグチは一人どこかに行った。俺は京都を去った。シュウさんに会うことも、もう最近あまりないけど、変わらず歌い続けていて欲しいなと思う。
夕暮れの部屋でふと一人聴きたい、こんな音楽、作り続けてほしいなと思う。

岩出拓十郎(本日休演)



 こわいアルバムだ。
わかりやすい楽しさなんてないのに、すべてがわかりすぎたように腑に落ちる感覚。
あいまいな具体性を離れたその静かなノイズは、強烈なひとつの印象として爆発する。
自分自身の輪郭がなくなるように、気づけばHello Honuの鳴らす音に全身が侵食されている。
あなたはそんな音楽を聴いたことがありますか?そう、未知との出会いはいつだってこわいのだ。
あとに残るのはただ未知の快楽。

さえきゆいと(日本少女)

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