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<鈴木惣一朗・2019年 『カントリー・ガゼット』について語る>
※『カントリー・ガゼット』を生むきっかけとなった大好きなアルバム『ニルソン・シングス・ニューマン』(1970年)と一緒に。
『カントリー・ガゼット』は1997年リリースですが、この作品を作っていた時の時代背景は、作品内容に影響を及ぼしていますか?
―制作は1990年中頃だと思うけど、ジャンルとしては、ハウス・ミュージック、トリップ・ホップ、オルタネイティブ、サッドコアなどが活性化していた時期で音楽が出来ない人も、サンプラーを使って面白い音楽をどんどん作っていた。それに僕は強い刺激を受けていて自分なりに「カントリー・ミュージックでやれないかな?」と思ったのが最初。
同時期のアーティストで、意識していた人はいましたか?
―やっぱりジム・オルーク、ハイ・ラマズ、ベック、あとはジョン・マッケンタイア辺り。彼らはサンプリングじゃなく、ちゃんと歌ったり演奏していて、僕もそれで良かったのかもしれないけど、方法論としてサンプリングに気持ちが大きく傾いたというか‥。カントリー・ミュージックをベースに歌ったり、普通に演奏しちゃうとダメなんじゃないかと。もっと捻じ曲げないと、日本人の僕の場合は生業が違うだろうと考えた。機材は、今みたいにプロ・トゥールズのシステムは無かったけど、サンプラー(Akai S2000)は持っていて、そこにどんどん音を入れて編集していくというスタイル。当時は<一日一曲>のノルマを自分に課していて、毎日16時間位レコーディングしてた。全ての音をサンプリングやシンセ・モジュールで組んでコンピューターをプレイして、DATのマスター・テープに録音したら、その日の録音はおしまい。毎日、その繰り返し。
とにかく、サンプラーを使って作りたいという意思が強かったということですか?
―サンプラーを使って作るってことは、音楽に<編集ありき>ということ。その時期、編集するということが何よりも大事だった。でも、その時にやっておいて良かった。おかげで後年、DAW(デジタル・オーディオ・ワークステーション)にすんなりと移行出来たから。
『カントリー・ガゼット』は『ワールドスタンダード2』に比べて作風が暗く感じたのですが、そうなったのはなぜですか?
―映画の<ゴシック・ホラー>の影響かな。例えば70年代なら『エクソシスト』とか、今リメイクされている『サスペリア』とか大好きだった。で、幕間には必ず綺麗な音楽がかかる。『エクソシスト』がマイク・オールドフィールド、『サスペリア』はゴブリンというグループが手掛けていた。
<怖いものに、綺麗なものが入っていると余計に怖い>。それが90年代中頃、トリップ・ホップの代表格ポーティスヘッドが出てきて再度、覚醒した。あとは、やっぱりデヴィッド・リンチのドラマ『ツイン・ピークス』を観たことが大きい。「ワールドスタンダード2」は明るくて、パラダイス、天国、エキゾチックなイメージだったけど、音楽的な束縛感も感じていて、そうではない部分が<ゴシック・ホラー>の世界によって解放されたという感じ。でも決定打は、ジョン・フェイヒィの音楽に触れたことかな。「これは何だ?」と相当、びっくりした。それまでフェイヒィの音楽は「フォーク・アンビエント」とか「ニュー・エイジ」と紹介されていたけど実際に聴いたら、僕にはそんな風には聴こえなかった。ポスト・ロックを聴くよりも数倍、刺激的で「最高に不思議な音楽だ!」って思った。こういう出会いって周期的に来る。細野(晴臣)さんの音楽もそうだったし、マーティン・デニーもそうだった、ヴァン・ダイク・パークスもそうだった。それを聴き逃さないようにしていれば(音楽的に)発露されるものが自分に降りてきて、その恩恵で音楽が作れる。
このアルバムの中で思い入れのある曲は?
―これはライナーでも言ってないんだけど、実はこのアルバムのタイトルは最初『カントリー・サッド・バラッド・マン』だった。細野さんとは一曲だけだったけど一緒に作りたいなと思っていて。「カントリー・サッド・バラッド・マンていうアルバムを作ります」って言ったら、細野さんに「随分悲しいタイトルだね」と言われてしまった。それで曲名だけがアルバムに残り「タイトルは『カントリー・ガゼット』の方がヒップだろう」と変更される。なので細野さんと一緒に作った「カントリー・サッド・バラッド・マン」に思い入れがあります。
この作品をひとことで表すと?
―小柳(帝)くんが解説で「バーチャル・カントリーの世界へようこそ」と書いてくれたけどその通りで、「架空のサウンド・トラック」であり「古いアメリカ映画のロード・ムービー」のよう。例えばヘンリー・フォンダ主演『怒りの葡萄』(1963年)の空気感。風が強く吹いていて、埃っぽくて、タンブルウィードが地面を転がっているような世界。その後、田辺マモルくんのレコーディングで、実際に米・ナッシュビルに行くことになって、それが次作の『マウンテン・バラッド』にぐっと反映されるんだけど、『カントリー・ガゼット』時期は、すべて僕の妄想。頭の中でアメリカ音楽が「爆発」しちゃってる。
<2019年2月 都内某所にて。>
ジョン・フェイヒィ『アメリカ』
ジム・オルーク『バッド・タイミング』
ポーティスヘッド『ダミー』
ハイ・ラマズ『ギデオン・ゲイ』
ブリッジ限定・特別企画 第二弾 <鈴木惣一朗・2019年 『マウンテン・バラッド』について語る>はこちら。
ブリッジ限定・特別企画 第三弾 <鈴木惣一朗・2019年 『ジャンプ・フォー・ジョイ』について語る>はこちら。
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