BRIDGE INC. ONLINE STORE

レーベル:円盤/HOREN　
品番:EBD106/MIMI18
フォーマット:CD
2004.12.10発売
※品切



そもそも“足踏みオルガンを弾いて犬の生活を唄う”というコンセプト自体が突飛であるからして、実際に鳴らされる音楽はかなり独創的である。しかも生まれ持ったこの声であり、そしてこの演奏法である。独特過ぎて他人に合わす事が出来ず、「セッションは嫌い」と言うくらいだ。現実より数センチ浮いている音楽界の中でも更に数ミリ浮いているといえるジョンは、したがって現実との折り合いをつけるのに苦労して来た事だろう。
　そんな10年間である。ふにゃふにゃととびきりのナンセンスを10年間唄ってきたのである。
　この10年でジョンによってカバーされた他のミュージシャンはフランク・ザッパ、
トム・ウェイツ、アンクル・ウィグリー、セルジュ・ゲンスブール、たまと限られていて、これはジョンの独自性が故である。

　活動10周年を記念し、考えられないような企画盤が２枚完成した。１枚は豪華ミュージシャンによるジョン・トリビュート・アルバムであり、もう１枚は本作、ジョンによる大胆不敵なカバー返しである。
　本作はジョンの世界にぴったりな曲、原曲に引きずられてしまった曲、ヴォーカルがあまりにあちゃこちゃであったり、演奏が充実していたりと様々な聴きどころが膨大に隠されている録音集となっていて、全曲の詳細な解説はとてもかなわないが、いくらなんでもこればかりは説明が必要なのは「キスをちょうだい」である。
　若手シャンソン歌手として着実に実績を築いているソワレの『シャンソンチック
・ソワレ』（ＶＩＶＩＤ）からの曲であるが、歌詞がひどく変えられている。「キス」を「鱚」にひっかけたついでにスキャット「サバダバダ」を「鯖ダバダ」と唄い、調理法の歌になってしまっている。オリジナルは狂おしく情熱的な曲なので是非ご一聴を。
　ＤＥＬＵＴＩＯＮ　ＶＡＲＲＥＹはＧＹＵＵＮ　ＣＡＳＳＥＴＴＥのスハラケイゾウのバンドで、この曲はＶＡ『谷岡ヤスジに捧ぐ』（oz disc）に収録されている。90年代中盤、ライブで演奏されていたときも冒頭のＭＣから曲になだれ込んでいたのを記憶している。
　ねこ虫は沖縄でどんととの共演経験のある、博多等で活動していたゴトウイズミのユニットである。

　カバー集において成功とは原曲の魅力を引き出す事よりも、演奏者が自分の個性を見せつける事の方が勝っているのである。その意味でこのアルバムは未消化部分を含めてジョンというアーティストの強烈な独自性／個性をあからさまに印しており、ちまたに氾濫する意図不明なカバー集／トリビュート・アルバムとは一線を画した成果を上げている。
---逆本先史

[track list]
※(　)内は原曲のアーティスト名
1.「風」 （割礼）
2.「フニャフニャ赤ちゃん」　（高橋敏幸）
3.「何処へ帰る道」　（岸野雄一）
4.「キスをちょうだい」　（ソワレ）
5.「村のバラッド」（DELUSION VALLEY）
6.「あっぱれあっぱれ」 （三上寛）
7.「バルボール」　（ねこ虫）
8.「巴里、それから」　 （ダンボールバット）
9.「ミートボール〜かつおと野菜ののっけ盛り〜煮物上手のうた」（栗コーダーカルテット）
10.「Johnson」　（Harpy）
11.「かなしいずぼん」　（たま）
12.「陰謀老人」　（チルドレンクーデターVer.Boo）
13.「ディヴァイン」　（エロヒム(original ver. ヴァリエテ)）
14.「うぬぼれライダー」　（吐息）
15.「ブンチャカ文化人」　（少年ホームランズ）
16.「パリで死んだ虎」 （あがた森魚）
17.「OCTOBER」 （RUINS）
18.「ラヴレター」　（ニプリッツ）
all cassette recording!